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豊洲から築地、そしてお気に入りの居酒屋の共通点

  • 執筆者の写真: Kaz Saito
    Kaz Saito
  • 2024年3月3日
  • 読了時間: 5分


引き抜かれて入った会社が倒産、事件に巻き込まれたことも数回、海外で死にそうになったり、視力の一部を失ったりと、30歳以降、ほんと心安まる間もない僕の人生であります。


そんな壊れかけた橋を渡るようは状況が一段落したのは、63歳で会社を畳み、一人でここ新宿御苑に個人事務所を開いてからではないかしら。


それから早10年の時が流れたわけですが、今一番、心安らぎ、そして心ときめくときってなにかと考えると、料理のことをしている時間なんです。


料理のこと、と書いたのは、料理だけではなく、献立を考えたり食材を用意したりするのも大好きなんですね。そのプロセスの中でも、市場に仕入れに行くときがなによりも心躍ります。


と、前振りしたところで、皆さん、お気に入りのレストランや居酒屋って、なにを規準に決めていますか。僕は自分で料理することは好きですが、お気に入りの居酒屋でうまい肴で一杯、いや数杯やるのも大好き。


飲酒歴半世紀以上となれば当然立ち寄りするお店もそれなりの数になります。その中でも取り分け好ましく思っているお店が数軒あるわけですが、その共通点といえば、


オーナー自ら仕入に市場に行っている


ことなんですね。実は四ッ谷三丁目の某店の大将とは豊洲で、新宿御苑のもう1店舗の主人とは築地でよく会います。


こちら、月に数度しかいかなのに遭遇するってことは、彼らは市場が開いていればほぼ毎日、仕入にいっているってことですよね。


で、その両店とも、予約は1週間以上前には入れておかないと席が取れない人気店です。


今では食材の配送サービスも充実していて、自ら出向かなくてもなんでも手に入る時代ですが、そんな環境下、直接現場に出向くというのは、「事件は現場で起こっている」と同じ精神と感じるのは僕だけでしょうか(笑


レシピの完成度、そして腕が重要なことは承知していますが、なんといっても食材がよくなければどうしようもありません。


市場に行けば食材が旬を教えてくれます。多く並んでいる魚や野菜が、自然に使うべきときを教えてくれるというわけです。


ということで、僕の好きな上記2店舗とも定番メニューにこだわらず、その折々に美味しいものを提供してくれます。結果、それがリーズナブルなお代にも反映してくれるのですから、言うことありません。


かくいう僕が市場通いを本格的に始めたのは、自分の料理教室をスタートさせた10年前からです。


まだ築地場内があった頃、僕の師である故・柳原一成先生に紹介いただいた仲卸に伺って、小口での仕入をさせてもらいました。


築地では僕の通う柳原料理教室の名前はもちろん誰でも知っている金看板、その生徒だということで、ほんとよくしてもらいました。


そして築地が豊洲に移転してからも、新しい場内をくまなく歩いて、まずお付き合いのある仲卸さんから初めて、徐々に顔を出せるお店を増やしていきました。


とはいうものの、豊洲は東京の西に自宅がある僕にとっては時間とコストがかかりすぎ、重い荷物を運ぶにも大変という難点が。


そこで、一昨年から築地魚河岸の小田原橋棟と海幸橋棟によく通うようになりました。当初は豊洲とは比べものにならない品揃えが不満でしたが、よくよく店舗を見て回ってみると、むしろ小口の我々にとってはこちらのほうが好都合であることに気付きました。


水産から青果、さらには乾物、肉類までコンパクトにまとまっており、教室で使う食材を揃えるのに不足はありません。


しかも、場外には道具屋、さらぶ教室御用達の削り節の川邊商店、鶏肉の宮川もあるので、ほんとに便利です。


実はここでもあっと驚く出会いがあったんです。教室でお世話になっている超先輩Mさんと遭遇、聞けばMさん御用達の魚屋があるとのことで、さっそく紹介してもらいました。そこが最近贔屓にしている築地京冨。


海幸橋棟に入ってすぐの角にある小さな鮮魚店ですが、Mさん曰く「ここの社長は目利きよ」とのこと。豊洲では父親が、築地では息子さんが仕入れを担当していたのですが、そのお父さんが亡くなって、今では江戸時代まで遡って五代目となる息子さんの門井さんが両店舗を回しています。


なので築地のお店に門井さんが入るのは10時すぎですが、前日に頼んでおけば少量でも材料を揃えてくれます。直近では白みる1個、北寄2個、帆立5個、牡蠣5個と細かい注文も嫌な顔ひとつせず引き受けてくれました。


その市場で心がけていることといえば、なんといっても故・一成先生の教えです。


「市場にいって安いものを買おうってのはだめだよ。せっかくなんだから高くてもいいものを買いなさい」

そして、一成先生の奥様・紀子さんの言葉も心に刻んでいます。


「ねぎっちゃだめよ。まず言い値で買ってあげること。そしたらいいものを回してくれるようになるから、そのときまでがんばるのよ」


明日も仕入に築地です。インバンドの観光客でごった返して歩くのも大変ですが、そんな中、どんな食材に出会えるかあちこち見て回るのはなによりの楽しみ。アクセスの良さもあり、僕は、豊洲といわず、まずは築地に、です。


写真は築地京冨の店長と一緒に。築地魚河岸に行く機会があれば店舗を覗いてみてください

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